脂質とケロイドの関係・2
肥厚性瘢痕中の脂質に含まれる脂肪酸のうち、アラキドン酸とオレイン酸は「不飽和脂肪酸」でした。
今回はこの不飽和脂肪酸を少し細かく見ていきます。
必須脂肪酸は私たちが生きていく上で無くてはならない「必須」の栄養素です。食用油等に含まれています。
必須脂肪酸は油分からしか摂れず、体内では造れません。
なぜ「必須」なのかというと、これらは私たちの体の細胞膜やホルモンをつくる原料であり、そのため体のほとんど全ての機能に関係していて、体にとっては不可欠なものだからです。よく耳にする、脳の働きにとって不可欠な「DHA」もこの不飽和脂肪酸、脳は良質の油でできている、といっても過言ではないほどです。
必須脂肪酸の不足で起こる症状は、昔から、皮膚症状、頭痛、疲れやすさ、体力不足、頭の働きの変調、すぐに炎症や出血が起き関節がむくむこと、不妊、流産、腎臓のトラブルなどが知られています。
必須脂肪酸には「オメガ-6」と呼ばれている形の脂肪酸と、「オメガ-3」と呼ばれる脂肪酸があります。本来、この2種類の脂肪酸はバランスよく摂る必要があります。
オメガ-6・・・コーン、大豆、ひまわり、紅花などに多いリノール酸系列。「アラキドン酸」はこのリノール酸が体内で置き換わった脂質成分です。
オメガ-3・・・海藻、シソの実、魚介類、亜麻仁油などに多いα-リノレン酸系列。よく耳にする「EPA」や「DHA」はこのα-リノレン酸が体内で置き換わった脂質成分です。
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脂質とケロイドの関係
真性ケロイド中の脂質成分に関しては公開されていないようなので、今回は肥厚性瘢痕中の脂肪分の分析を行ったチームの研究結果をもとにお話を進めたいと思います。
正常な真皮と肥厚性瘢痕に含まれる脂肪酸の組織を分析した結果、正常真皮に比べ、肥厚性瘢痕中にはステアリン酸・アラキドン酸が多く含まれ、オレイン酸が少なかった、と結果が出たそうです。また、コレステロールは正常の3倍の濃度であったのに対し、トリグリセリドは3分の1の濃度だった、という報告もあります。
聞きなれない言葉が出てきたので、ここで脂質について調べてみましょう。
脂質のうち、大部分を占めるのが脂肪酸です。一般に人体のエネルギー源となり、細胞や血管などの私たちの体づくりを支える栄養素です。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の二種類があります。
飽和脂肪酸は常温で固体で存在することの多い脂肪分で、牛脂やラード(豚の油)などがこれに当てはまります。
不飽和脂肪酸は、ホルモンや細胞膜や消化に必要な胆汁酸の原料となったり、細胞の機能を十分に発揮させるのに欠かせない栄養素です。
体にとって不可欠なものでありながら、自分で造ることはできず、外から補給するしかありません。
先ほどの肥厚性瘢痕中のデータと照らしてみると、ステアリン酸は牛脂やラードと同じ飽和脂肪酸、アラキドン酸とオレイン酸は不飽和脂肪酸に分類されます。

ケロイドの原因・外部からの刺激
まず、ケロイドのよく発生する場所(好発部位)と、そうでない部分を挙げてみたいと思います。
・好発部位・・・上腕外側、胸部正中、肩甲骨部、恥骨部、耳垂部
・あまり見られない部位・・・頭皮、陰嚢、眼瞼
あくまで憶測ですが、上腕はBCG、胸部正中はアクセサリーやブラジャーのワイヤー、耳垂部はピアスやメガネのフレーム、恥骨部はベルトのバックルやズボンのファスナー、下腹部の手術の縫合には金属製の針が使われ、縫合糸(異物)が一定期間存在する。そして髪の長い女性であれば、太い人では1ミクロンほどもある、毛先が首や肩甲骨・鎖骨部分を刺激し、毛アレルギーに気づかず着用する衣服が、首周りなどを常時刺激する・・・と、こんなシナリオが考えられます。
逆に、ケロイドになりにくい部分について見てみると、上記項目に共通するのは、「保湿がされやすい場所にある」というだと思います。
ケロイドのように、人によってなりやすい・なりにくいに差がある皮膚病としてアトピー性皮膚炎が挙げられます。アトピー性皮膚炎の場合は瞼までカサカサになることもしばしばありますが、ケロイドと決定的に違うのは、アトピーは大まかにいうと「肌にとって必要な脂肪分が少ないことで起こる病気」であることに対し、ケロイドは「脂肪分を必要以上に造りすぎてしまう病気」であるといえます。
そこで、次は脂質とケロイドの関係を見ていきたいと思います。

汗と金属とケロイド・2
金属アレルギーの発生のメカニズムとしては、金属が汗に触れ、溶け出してイオン化し、体内のたんぱく質と結合します。これをアレルゲン(アレルギーの原因物質)として体がみなし、次に同じ金属に触れたときにアレルギー症状を起こすことが原因です。
夏場は冬よりも汗を多くかくため症状が出やすいです。つまり、塩分を多く含む汗と、露出する場所につけた金属が反応することによって、体が「外敵」とみなす物質を作ってしまうのです。
また、ピアスを初めてつけるときが一番危険だと言われています。なぜならピアスは皮膚に穴をあけるため、金属が体液にさらされるからです。ピアスホールに皮膚が造られるまでは、金属を使用しないものを使用するのが望ましいと言えます。
また、ファーストピアスそのものが金属でなかったとしても、穴を開ける際に使用するのは医療用であっても金属であることに変わりありません。そのあたりも考慮の上で望まなければならないのです。
ここまで見ると、金属アレルギーとケロイドの発生部位と、この金属がよく使われている部分がとても似通っていることがわかります。刺激に対し、過剰に反応する自分の細胞が起こす症状である、ということも変わりありません。

汗と金属とケロイド
角質層の防護機能を果たす、重要な役割を担うのが前述した「皮脂膜」でした。
皮脂膜が造られる過程において、重要なプロセスの一つに「汗と混じり合うこと」がありました。
そこで今回は汗の成分と働きについて見ていきたいと思います。
汗の成分の大部分を占めるのは「水」です。水以外の成分では、NaCl(塩化ナトリウム)が約0.65%、尿素0.08%、乳酸0.03%です。
NaClは塩分そのものです。
しかしこの成分は一定ではなく、例えば運動して大量に汗をかいた時などは、NaClが0.9%に近づいていきます。これは血液の浸透圧とほとんど同じ数値です。どういうことかというと、私たちの体は通常、一度汗腺で作られた汗は、体外に分泌されるまでの導管の部分で、塩分が再吸収される・・・つまり塩分が外に出て行かないよう節約されているのですが、汗の量が大量になるとその再吸収が追いつかなくなるのです。
ケロイドがあることに気づきやすい部分として、首筋のデコルテ部や、女性であれば乳房周辺などが挙げられると思います。
これらの部分は汗をかきやすく、また日常的にアクセサリーやブラジャーが触れる部分でもあります。
アクセサリーとして広く一般使用されている金属として、加工しやすく安価であるニッケルが挙げられます。製品としてブラジャーの金具、ベルトのバックル、眼鏡のフレームなどに広く使われているため、アレルギーを起こす頻度が高く、女性の金属アレルギーによる皮膚炎では第一の原因となっています。

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